2018年03月20日

バイオリンのCT解析

CT analysis of bowed stringed instruments. (弦楽器のCT分析)
http://pubs.rsna.org/doi/10.1148/radiology.203.3.9169708?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%3dpubmed

 この論文は、アメリカのミネアポリスの放射線科医が書かれたものです。研修医の時に、北米放射線学会のRadiologyという学会誌に載っているのを見つけました。
医学の本ですが、バイオリンを医療用のCTを使って検討されていて、その当時研修医ながら、放射線科って自由でいろんな先生がいるもんだなあと関心したのを今も覚えています。
それをまねたわけではありませんが、昔、自分でも指をポキッと鳴らすのをCTで撮ったりしたこともありました。
 今回ブログ担当にあたり、あらためてPubmedという生命科学や生物医学の論文の検索サイトで、Violin, CTというキーワードで検索すると6論文が見つかり、このうち3論文が実際にバイオリンについて検討した論文でした。もちろん生命医学以外での論文は複数あるようです。
今回はこのうち上の論文を書いた先生が、翌年にもう一つ書かれていた論文について主に紹介します。
Use of CT in Detection of Internal Damage and Repair and Determination of Authenticity in High-Quality Bowed Stringed Instruments 
(高品質の弦楽器の内部損傷の検出、修理と真正性のためのCTの利用)
http://pubs.rsna.org/doi/abs/10.1148/radiographics.19.3.g99ma09639
こちらから全文は読めると思うので興味ある方は、読んでみてください。

この2つの論文は放射線科医と楽器の専門家によって書かれています(そんな組み合わせみたことありませんが) 。
最初に紹介した論文では、学生が使う楽器からストラディバリウスまでの楽器の表板と裏板の曲線や厚さ、輪郭を定性的定量的に評価し木の密度も測定しています。
そしてこの論文では、1633年から1872年までに作られた14丁のバイオリンと3丁チェロをCTで撮像しています。これより前に、X線写真でも検討されたものはあるそうですが、CTを撮ることによって楽器の内部構造に固有の定性的情報および定量的情報の両方を得られ、高解像度の薄い画像のCTスキャンは、表板、裏板ののエレガントな曲線(archings)と変化する厚さ(目盛り)と、楽器の穏やかな湾曲した輪郭を明らかできるとのことです。1本目の論文で表と裏のプレートの厚さと減衰のCT測定値が実際の木材厚さと木質密度測定値とよく相関していることを示しました(P <.001)
撮像するときには、アーチファクトになる金属の部品(G線や顎当ての金具など)を外して撮像したとのことです。バイオリンは1mmスライス厚で、チェロは10mmスライス厚で撮ったとのこと。バイオリンがCTの寝台の上に乗っているのはなんとなくかわいいですが、チェロが寝台の上に乗っているのはなかなか迫力がありそうです。
結果としては、どの楽器も様々な程度の損傷や修復が検出されました。またどの楽器でもニカワを用いた修理跡があったとのことです。また虫食いもあったそうです。Anobium domesticum?というカブトムシの仲間?によって虫食いがあるそうです。あまり聞いたことないのですが、日本でも虫に食われることあるようですね。
また損傷では、温度や相対湿度の急激な変化によって生じるともあり、航空機に搭乗でも生じるともこの論文には書いてあります。
著者らはCTを撮ることによって、目視検査では不明であったり、過小評価される損傷や修復が検出されると言っています。
また、木目パターンがわかり、偽造や紛失、盗難された場合には有用かもしれないと言っています。
よって保険会社が保険に加入する前にCT分析を依頼することを推奨しています。
そんなに高い楽器に触れたこともなく、関係することもないので、実際に保険加入時にもCTを撮られていることもなさそうですが、なかなかユニークな研究ですね。
20年前のCTでも人間を撮るのとは違って、時間をかけたと思われ、なかなか綺麗な画像ですがしかし当時のCTではなく、現在のマルチスライスCTで撮像したらもっと綺麗な画像が撮像できそうです。
しかし今はなかなか研究対象として、患者様を対象とする臨床機でバイオリンを撮像することは難しいです。
なので、残念ですが、臨床用ではない研究用のCTや工業用のCTで撮るのが、よいようです。

以下、図は2つの論文から引用しました。
図1. 論文に紹介されていたバイオリンの解剖ではなく図です。こんなのが医学論文に載ってるって面白いですね。
図1.jpg
図2 3,ストラディバリウスのバイオリンの冠状断像、これにより正確な複製が出来る。4a.アマティのバイオリン、4b,は生徒用のバイオリンで、表板と裏板の厚さが全く異なっています。
図2.jpg
図3.4 3.ペグボックスの虫食い像。4.チェロのスクロール(渦巻き)の部分の虫食い像(矢印)と、にかわで修理されたあと(矢頭)
図3,4.jpg
図13. a. ストラディバリウスのバイオリンの渦巻き、b. ベネチアのチェロの渦巻き。指紋のようなパターンを呈しており、楽器を同定するのに役立ちます。
 図13.jpg

文 Vn,の中の人
posted by 八幡市民オーケストラ at 22:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記