2017年02月18日

拍手のあとに

演奏会本番が終わったときの気持ちは試験終了時のそれと似ている。照明に煽られるような高揚感、お、この調子だ、○○(楽器名)のソロもばっちり決まった、晴れた雪の上を絶好調で滑りきった達成感と安堵の向こうから、それは暗雲のように迫ってくる。あと1日、いやせめて3時間あればもう少し練習(勉強)できたのに。聴かせどころが単純な発音(回答)になってしまった、予想外の流れ(追加諮問)になった。後悔とか反省ではない。もう取り戻せなくなった時間を引き戻したいような思いがどこからともなく溶け出てくる。最後に受けた資格試験からもう10数年経つが、演奏会を終えたあとの言いようのない気持ちは毎回新鮮に登場する。
「私、失敗しませんから。」と女性外科医が啖呵を切るテレビドラマがあった。孤高の主人公が、自身の知識と技術、機知だけを武器に、予想外の難局も必ず切り抜けていく。巨大な組織をカサにきて私利私欲に走る輩のメンツが丸つぶれにされていく水戸黄門的展開に、してやったりと拍手を送りたくなる。見えない将来を言い切ってしまえるD門R子は、失敗ではないけれど、、、という言い淀むこともないだろう。台本のない毎日で約束されているのは、これから先も水戸黄門は登場しないということだけだ。
初めての本番演奏だから味わうのだろうか。何度も演奏経験のある曲、複数回の本番なら味わうことはないのだろうか。時々出かけるカフェで、先日ミニコンサートがあった。至福の時が過ぎ、拍手もひととおり鳴り止んだあと、数々の名演奏をこなしてきた人の口から出てきたのは、ああもう大変でした、という言葉だった。職業演奏家だから、2日連続同じプログラムだから、という予想は大はずれ、楽器をなでながら、この人は今きっと「あの気持ち」になっているに違いない。注がれたグラスの水を、巨匠は一気に飲み干した。
才色兼微
posted by 八幡市民オーケストラ at 17:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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