2020年09月05日

音をみる 響きをえがく

むかし、聴音のグループレッスンを受けていたことがある。そのレッスンには、楽曲分析に取り組む時間があった。先生はいつも最初にピアノで課題の小品を弾いて、私達に聴かせてくれた。そして次に必ず、「この作品からどんな色を感じるか?」と質問してくるのだった。
自分の感じた色と、他の生徒仲間の感じた色が一致すると、単純に嬉しかった。他の人の感じた色が、自分の感じたものとちがっても、「その色もアリだよね」と納得できることが多かった。私も他の仲間も、楽器の演奏技術は高くはなく、様々な音色を出せるわけではなかった。そんな自分達にも、音楽に色を感じる感性が備わっており、そしてその感性は他者と共有できるものであることに気づけたのは大きなことだった。

ところで私は今、八幡オケの定演のチラシ・チケットのデザインを担当している。私は本職のデザイナーではないので、いろいろアラはあるのだが、オケの皆さんは目をつぶってくれていて、かなり自由にやらせてもらっている。
そこで私は、チラシに使用するイラストを自作するとき、メイン曲の「響きをえがく」ことを自分に課すことにしている。あの聴音のレッスンのときのように、「この曲からどんな色を感じる?」と自分に問いかけるのだ。
オーケストラの演奏会のメイン曲は、ほとんどの場合シンフォニーだ。シンフォニーのような絶対音楽を描くときには、標題音楽を描くときとは違う感覚が必要になると思う。例えば、オペラやバレエ、映画の音楽作品なら、ストーリーのワンシーンや登場人物など具体的なものを描くこともできる。ところがシンフォニーは、純粋な音の構成で成り立っており、タイトルなし、作品番号のみ、具体的なイメージの手がかりは与えられていないということも多い。良く言えば、聴き手の想像の自由に委ねられているとも言える。そんなわけで私の場合、シンフォニーを描こうとすると、色彩が水や大気、炎のように光りかがやき、流動する絵になる。夕焼け色、ひろがる金色の雲海、荒れ狂う色彩の嵐などなど。
そんな音楽から感じる色を見つける体験のなかで、これまでで一番印象深かったのは、ショスタコーヴィチの交響曲第5番だ。有名な4楽章から感じる色は迷わず即答で「赤」、他の人にリサーチしてみるも、やはり「赤」という答え。でも前1〜3楽章は、絶対赤ではない。
この交響曲全体を色であらわすとしたらどうすべきか?悩んでいるうちにふと降りてきたのが、「燃える青色」のイメージだった。一見、「赤(ソ連共産党)」を賛美しているように見せながら、こころのなかではげしく燃える抵抗の「青」い炎。本当に自分が思っていることを言えない社会のなかで、ショスタコーヴィチが音楽を通して語った、人々の内なる真実が見えたような気がして、嬉しくなった。

私の感じた色が、唯一の正解というわけではないが、こんな音の印象の受け取り方もあるかと思ってもらえたら嬉しいし、みなさんにも、ぜひ一度音楽を聴くときに、「この曲はどんな色?」と自分に問うてみて欲しい。新しい感覚がひらけて、音楽を聴くのがさらに楽しくなると思う。

Vn MM
posted by 八幡市民オーケストラ at 15:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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